第1章:なぜ仕事や評価に苦しさを感じるのか
どれだけ努力をしても、望んだような評価が得られない──多くのビジネスパーソンが一度は感じるこの苦しさの原因は、「評価が自分でコントロールできないもの」だからだと考えています。
仕事の成果を出すには、自分のスキルや努力である程度対応できます。
しかし、評価となると話は別です。
そこには上司や評価者の主観、会社の人事方針、組織内の力学、タイミングといった自分ではどうにもならない要素が大きく影響します。
「評価されること」が自分の存在価値や将来に直結すると信じていると、その不確実性は強いストレスになると思います。
真面目で責任感のある人ほど、「頑張れば報われるはず」「実力を認めてほしい」と信じて努力を重ねます。
だからこそ、評価されなかったときの落差が大きく、無力感や怒り、不安が押し寄せてきます。
これはまさに、コントロールできないことに感情を支配されてしまっている状態です。
このような状況に陥ったとき、必要なのは「感情に任せて頑張り続けること」ではなく、「自分でコントロールできる領域と、できない領域を切り分けること」だと思います。
そして、後者に執着せず、前者に戦略的に集中することが、心の安定とキャリアの前進の両立を可能すると考えています。
第2章:感情ベースで働くと消耗する
評価を受けられるかどうかに心を支配されると、仕事そのものが苦しいものになってしまいます。
これは、働き方の「感情ベース化」が進んでいる状態です。
感情ベースの働き方とは、「頑張れば報われるべきだ」「上司にはわかってもらえるはずだ」「自分の方が貢献しているのに…」といった、期待や承認欲求が先行する働き方です。
このような状態では、目の前の成果よりも「評価されるか・されないか」が心の中心にあり、それがうまくいかないとモチベーションが大きく揺らぎます。
特に、周囲との比較が始まるとその傾向はさらに強くなります。
同僚や後輩が先に昇進した、自分よりも成果が出ていないように見える人が評価された──そうした出来事があると、相対的に自分の価値が下がったような錯覚に陥り、怒りや焦燥感、無力感が生まれてしまいます。
その結果、「こんなに頑張っているのに報われない」「これ以上やっても意味がない」と感じ始め、意欲が低下していきます。
評価されないことが、仕事そのものへの不信や自分自身への失望につながってしまいます。
こうした感情ベースの働き方は、エネルギーの消耗が激しく、長期的には燃え尽きやすくなると思います。
そして残念ながら、それがさらに評価を遠ざけてしまうという悪循環にもなりかねません。
だからこそ、ここで視点を切り替える必要があると考えます。
感情ではなく、“戦略”という冷静な視点で働く。
次章では、その「戦略的に働く」という考え方を具体的にお話します。
第3章:戦略的に働くとはどういうことか
「戦略的に働く」とは、感情や理想論に流されず、自分の目的に沿って評価や昇格を“使いこなす”という働き方です。
多くの人がキャリアにおいて、「昇格」や「上司からの高評価」をゴールとして捉えてしまいがちだと思います。
確かに評価されることは嬉しいですし、モチベーションにもなります。
しかし、それを“目的”にしてしまうと、評価されなかったときに自分の価値まで否定されたように感じてしまう。
これは非常に危うい構図だと思います。
だからこそ、評価や昇格は「目的」ではなく、「手段」として捉えることが重要と考えます。
たとえば、昇格は「収入を上げて投資や副業の資金を増やすための手段」、あるいは「裁量や影響力を広げて、やりたい仕事を自分の主導で進めるための道具」と考えることができます。
つまり、昇格=人生の選択肢を増やす“カード”と考えます。
この視点を持つと、評価に過剰に一喜一憂しなくなります。
たとえ評価されなくても、自分のキャリアビジョンが明確であれば、別のルートで目的を達成するという選択肢が生まれます。
私自身、「評価されるかどうか」は完全にはコントロールできないと割り切っています。
その代わり、自分がコントロールできること――たとえば「評価されやすい業務に集中する」「部長への報告の機会を月1回は作る」「成果は数字で見える形にする」といった行動には、戦略的に注力するようにしています。
このような働き方は、外的評価に振り回されず、自分の価値観に基づいてキャリアを築いていくことを可能にすると考えています。
そして、評価されたときはその評価を「使う」。
それくらいの距離感が、長く安定して前向きに働き続けるための秘訣だと思っています。
第4章:戦略的に成果を出すための5つのアクション
評価や昇格を目的化せず、あくまで「自分の目的を達成するための手段」として扱う──。
この視点を持つだけでも精神的にかなり楽になりますが、より確実に成果を出して評価につなげるためには、日々の行動も“戦略的”に選んでいく必要があると考えています。
ここでは、私自身が心掛けて実践している「戦略的に成果を出すための5つのアクション」を紹介します。
1. 評価されやすい仕事に集中する
どんなに努力しても、評価されづらい仕事は存在します。
逆に、成果が数字や影響として“見えやすい”仕事は、評価されやすい傾向にあります。たとえば、売上向上や利益改善に直結する仕事や所属組織の重点方針に位置付けられている仕事などは、評価者の目に留まりやすい領域だと思います。
ある意味、あたり前のことですが、すべての業務に全力投球するのではなく、評価に直結しやすい仕事を選び、その中で成果を出すことが、最小の労力で最大の効果を得ることに繋がると考えます。
2. 成果は“伝えて”初めて評価される
良い仕事をしても、黙っていては伝わりません。
むしろ、自分が思っている以上に他人は「見ていない」「気づいていない」と感じています。
だからこそ、成果は自ら報告し、発信する仕組みを作ることが重要だと思います。
私の場合、部長に報告する定例会議の場で、できるだけ月1回は「自分やメンバーの業務を報告する」ことを目標にしています。
部の重点方針に基づく業務や他部署との連携で進めている案件などについて、報告することを意識しながら業務に取り組んでいます。
3. 報告内容は「構想」とセットで伝える
単に「こういう成果が出ました」と伝えるだけでは、不十分だと考えています。
大事なのは、その成果の“意味づけ”と“次の展開”まで見せることです。
たとえば、上位方針を受けて取り組んでいる担当業務について、目指す姿や課題は何であり、どういった時間軸・計画で取り組んでいるのかを明確にする。
その上で、今回の成果が、今後、組織としてどこまで波及し効果を出すのかといった視点で報告することで、視座と将来性を印象づけることができると思います。
4. 存在感を“意図的に”可視化する
あなたが何をやっているのか、どんな強みがあるのか。
評価者がそれを継続的に把握していなければ、昇格の候補に挙がることはないと思います。
そのために必要なのが、たとえば、「月1回の発信」+「週1回の接点」といった“存在感の可視化”だと思います。
- 定例会議で発言する
- 社内チャットで投稿する
- 社内共有資料に自分の提案や考察を残す
など、細かな工夫の積み重ねが、信頼と評価の土台になると思います。
5. 昇格しなくても「納得できるキャリア」を持っておく
最後に一番大切なのは、仮に昇格しなかったとしても、自分自身が納得できるキャリアを描けているかという視点だと思います。
今の私にとっては、タイと日本の2拠点生活、定年後の独立、副業・資産形成による自立などが、一例になります。
だからこそ、「評価されればラッキー、されなくても他の道がある」と冷静に考える余地を持って働くことができています。
この“心の逃げ道”があるかないかで、日々の精神的な安定度合いは大きく変わると感じています。
第5章:自分らしさの軸があるから戦略的に働ける
戦略的に働くうえで、もうひとつ欠かせないのが「自分の軸」を持つことだと考えています。
ただし、ここで言う「軸」は、完璧に定まった信念や理想像のことではありません。
むしろ、「いまの自分が納得できる“仮の答え”」を持っているかどうか。
それが、判断に迷いが生じたときのよりどころになると思います。
「軸がない状態」は、他人の物差しに支配されやすい
キャリアにおける不安や焦りの多くは、「自分の判断基準が曖昧なまま、周囲の評価や期待に合わせて頑張ってしまう」ことで生まると思います。
- 同僚や後輩が先に昇進したときに、焦りや悔しさが湧いてくる
- 上司に評価されなかったとき、「自分はダメなのでは」と感じる
- 仕事が忙しくなると、「この働き方を続けて何になるのか」と虚無感が出てくる
こうした感情が繰り返し生じると、「戦略的に働く」ことがどんどん難しくなってしまいます。
軸は“最初から決める”のではなく、“問いながら育てる”もの
私自身、正直に言えば、いまだに「これが自分の軸だ」と胸を張って言えるほど明確な軸を持っているわけではありません。
「自分は何を大切にしたいのか」「この先どう働いて生きたいのか」――何度も考えては修正してきましたし、これからも変わっていくと思います。
ただ、いまの時点で仮に言葉にするなら、次のような“自分なりの軸の仮説”は持っています。
- 自分の裁量で動ける仕事がしたい
- タイと日本、両方に拠点を持って自由に働きたい
- 子どもたちの教育をしっかり支えたうえで、自分の生き方を取り戻したい
- 会社員としての働き方から、徐々に自立・独立に向かいたい
こうした仮の軸があるからこそ、評価や昇進を「その目的に役立つなら受け取る」「そうでなければ気にしすぎない」と冷静に捉えることができるようになりつつあります。
軸があると、「成果の出し方」だけでなく「働く意味」を選べる
戦略的に働くとは、「どう成果を出すか」を考えることに加えて、「なぜ働くのか」「何のために働くのか」を定期的に見つめ直すことだと考えています。
この軸があることで、たとえ思うように評価されなかったとしても、「自分の選んだ道を歩いている」という感覚を持ち続けることができると思います。
軸は、固定されたゴールではなく、人生を通じて問い続けていく“コンパス”のようなもの。
それがあることで、会社や評価にすべてを委ねず、自分の人生を自分でデザインしていくことが可能になると思います。
第6章:まとめ−戦略的に働くことは、自分の人生を守ること
会社員として働いている限り、評価や昇格とは常に隣り合わせです。
努力しても評価されないことがあり、昇格のタイミングが思うように来ないこともある。
それはもはや個人の努力だけでは覆せない、組織や仕組みの構造による部分もあります。
だからといって、何も考えずに仕事をこなすだけでは、理不尽さや無力感に押しつぶされてしまいます。
この不確実な環境のなかで、心をすり減らさずに働き続けていくためには、「戦略的に働く」視点が必要不可欠だと感じています。
戦略的に働くとは、「感情に左右されず、自分がコントロールできる部分に集中し、評価や昇格を手段として使いこなす」こと。
そして、その根底には「自分はどう生きたいのか」「何のために働くのか」という、自分なりの軸が必要です。
私自身、まだ迷いながら、揺れながらも、
・評価を得るためにできることを戦略的に行動に落とし込み、
・評価されなかったときのために“もうひとつの土台”も並行して育てていく、
という考え方で働くようにしています。
それは決して「投げやり」でも「諦め」でもありません。
むしろ、「自分の人生を自分の手に取り戻す」ための行動です。
会社の評価がどうであれ、自分の人生の責任は自分にしか取れません。
だからこそ、仕事や評価にすべてを預けるのではなく、それらを“活かしながらも依存しない”働き方を選ぶことが、これからの時代において本当の強さになると感じています。
評価は、あれば活用する。なければ、静かに距離を取る。
大切なのは「評価されるために生きる」のではなく、「自分の人生を納得して生きる」こと。
それが戦略的に働くということだと私は考えています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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