1. はじめに:2拠点生活という選択肢
40代後半を迎えた今、これからの人生をどのように過ごしていきたいかを、改めて真剣に考えるようになりました。
仕事だけでなく、暮らしや健康、家族との関係、自由な時間──これらをどのようにバランスよく保ちながら、後悔のない人生を送りたいか。
その問いの先に見えてきたのが、「日本とタイ、2拠点生活」というライフスタイルでした。
これは単なる憧れではありません。
かつて4年間、タイで駐在員として働き、生活した経験が、自分の中に確かな実感として残っているからこそ描ける現実的な選択肢です。
日本と比べて自由度の高い働き方、暖かい気候、穏やかな人柄、美味しい食事──タイでの暮らしは、今振り返っても自分にとって心地よいものでした。
本記事では、なぜ私が「日本とタイの2拠点生活」という選択にたどり着いたのか。
その背景にある経験や価値観、実現に向けた課題や準備の内容、そして今後の構想について、率直に綴っていきたいと思います。
これからの人生を自分らしくデザインしたいと考える方にとって、少しでもヒントや気づきになれば幸いです。
2. タイ駐在を通じて得た気づきと変化
私がタイで駐在生活を送ったのは、2015年から2019年の4年間です。
最初の1年と最後の1年は単身赴任、真ん中の2年間は家族帯同という形で過ごしました。
この駐在経験は、仕事面でも生活面でも、私にとって非常に大きな転機となりました。
まず、仕事の面では、裁量の大きさが印象的でした。
日本本社と比べて組織の階層が少なく、現地法人の社長とも直接話す機会が多くありました。
技術部門の立ち上げというミッションの中で、現地採用や人材育成、設備導入などを自らの判断で進める場面が多く、「自分の意志で仕事を動かす」経験を積むことができました。
責任は重かったものの、仕事の充実感とやりがいは非常に大きいものでした。
一方で、生活面においても多くの気づきがありました。
特に家族との帯同期間は、海外で子どもを育てることの意味を深く考える時間となりました。
子どもたちは現地の学校や習い事を通じて、言語や文化の違いを自然に受け入れていきました。
外国人の先生や友達と接する中で、国籍や言語の壁を気にせず行動する姿に、私自身が刺激を受けたことをよく覚えています。
また、タイという国そのものの魅力にも気づかされました。
気候は温暖で、人々は穏やかで親しみやすく、食事も自分の口に合っていました。
週末にはバンコク市内の観光地だけでなく、チェンマイ、ホアヒン、パタヤ、カンチャナブリーなど、国内各地を家族で訪れました。
また、モルディブ、シンガポール、マレーシア、カンボジア、バリ島など、近隣の国々にも足を延ばすことができ、日常では得られない豊かな時間を過ごしました。
さらに、私は赴任前に「東南アジア10カ国すべてを訪問する」という目標を立て、4年間でそれを実現しました。
各国の文化や人々に直接触れることで、「日本で働き続けることが唯一の正解ではない」と実感するようになりました。
このような仕事・生活・旅の経験を通じて、私の中に少しずつ「この先もタイや東南アジアと関わって生きていきたい」「もっと自由な働き方や暮らし方を選びたい」という思いが芽生えてきました。
3. 2拠点生活を考える理由と目的
日本とタイ、2つの国を行き来しながら暮らす「2拠点生活」を考えるようになったのは、単にタイでの生活が快適だったという理由だけではありません。
人生後半において、自分がどのように働き、どこで暮らし、何に時間とエネルギーを注ぎたいのかを考えたとき、「場所に縛られずに柔軟に生きる」という選択肢が、自分にとって非常に自然で現実的なものだと感じたからです。
タイは、私にとって気候や食文化が合い、人間関係も築きやすい環境でした。
日常的に人々の表情や会話に余裕があり、日本で感じがちな忙しさや緊張感とは異なる空気がありました。
また、物価や住環境の面でもコストパフォーマンスが高く、生活の質を保ちながら、精神的にも豊かに暮らすことができました。
こうした環境は、年齢を重ねてからの暮らしとして、非常に魅力的だと考えています。
一方で、日本には家族や友人とのつながりがあり、子どもの教育や医療制度、将来の介護などを考えると、完全な移住という選択は私にとって現実的ではありません。
だからこそ、「日本とタイを行き来しながら暮らす」という中間的なスタイルが、自分にとってのベストバランスだと考えるようになりました。
また、働き方の面でもこのスタイルは合理的だと考えています。
近年はリモートワークや副業、複数の収入源を持つ働き方が少しずつ一般化してきたと感じています。
今後は会社に完全に依存しない形で、自分の専門性や経験を活かして働く道を模索する中で、場所に縛られないことは大きな武器になるのではと考えています。
特に、東南アジアには日系企業や現地企業の技術支援・品質改善の需要があり、自分の経験が活かせる余地があると感じています。
さらに、2拠点生活は「住む場所を選ぶ自由」だけでなく、「生き方を選ぶ自由」にもつながると感じています。
日本の中だけでキャリアや生活を考えると、どうしても年齢や肩書、役職に縛られがちですが、国をまたいで視野を広げることで、年齢を重ねた先にも希望を持つことができます。
私が2拠点生活を目指すのは、単に過去の駐在経験が楽しかったからではなく、「これからどう生きたいか」を突き詰めた先に見えた、自然な選択肢だと考えています。
4. 実現のための条件と課題整理
日本とタイの2拠点生活を実現するためには、理想や感情だけでなく、具体的かつ現実的な条件を一つずつ整理し、乗り越えていく必要があります。
ここでは、自分自身が考えている前提条件と課題についてまとめます。
① 経済的自立の確保
もっとも重要なのが、経済的な基盤の構築です。
現在は会社員として安定した収入を得ていますが、将来的に2拠点生活を実現・継続していくには、収入源を分散し、自立性を高める必要があります。
給与所得に加え、配当・利子収入といったストック型の所得、副業やコンサルティング活動によるフロー型の収入などを組み合わせ、柔軟で持続可能な経済基盤を構築していくことを考えています。
② 健康と年齢の制約
タイでの生活を楽しみ、移動や仕事も無理なくこなせるのは、健康寿命を踏まえれば60代から70代前半までと見込んでいます。
そのため、2拠点生活の実現には時間的な制約があります。
できるだけ早い段階で生活基盤を確立し、体力や気力のあるうちに新しい生活スタイルに慣れておくことが重要です。
日々の生活習慣の見直しや運動習慣の確立など、健康面の準備も並行して進めていく必要があります。
③ 家族との関係と日本拠点の維持
2拠点生活を考えるうえで、家族との関係も欠かせません。
子どもの教育や妻との生活、将来の生活拠点など、家族全体のライフステージを見据える必要があります。
現時点では、単身でのタイ滞在を基本としつつ、日本との往来を視野に入れたスタイルを想定しています。
また、日本の自宅や行政手続き、健康保険など、国内での生活基盤も維持し続ける必要があり、こちらの整理と管理方法も準備すべき課題の一つです。
④ ビザ・医療・保険といった制度面
タイで中長期的に滞在するには、ビザの取得・更新や居住手続き、保険加入など制度的な条件の整理が欠かせません。
リタイアメントビザや教育ビザ、ビジネスビザといった選択肢の中から、自身の状況に合った手続きを検討する必要があります。
また、タイの医療事情や海外旅行保険のカバー範囲、日本の年金・社会保険制度との整合など、生活インフラ面の知識も事前に備えるべきです。
⑤ 現地のネットワークと仕事の機会
正直に言えば、現在のところ現地での仕事の機会につながるような強力な人脈は持っていないというのが本音です。
タイ駐在中に築いた現地スタッフとのつながりはありますが、それが仕事の獲得や事業展開に直結するとは思っていません。
また、日系企業関係者についても多くは駐在員であり、すでに日本へ帰任しているケースが大半です。
だからこそ今後は、「現地に長期滞在している日本人技術者や経営者」「日系中小企業の現地責任者」「JETROや商工会のキーパーソン」といった、意思決定や情報収集に関わる層との接点を意識的に増やす必要があると感じています。
自ら情報を発信し、交流会やSNSを通じて相互の関心を築き、長期的に信頼される立場を目指していきたいと思います。
2拠点生活は、憧れだけで実現できるものではありません。
だからこそ、こうした課題を一つずつクリアしながら、自分にとって無理のない形で少しずつ実現に近づけていきたいと考えています。
5. 現在の準備と今後のロードマップ
2拠点生活の実現に向けて、私自身はすでにいくつかの準備を進めています。
とはいえ、まだすべてが整っているわけではなく、試行錯誤しながら道筋を描いている段階です。
ここでは、現時点での準備状況と、今後のステップについて整理します。
① 技術士資格と駐在経験を活かした将来的な独立構想
私はこれまで、材料技術開発のエンジニアやマネジメントとして長年にわたり自動車部品メーカーに勤務してきました。
加えて、技術士(金属部門)の国家資格を保有しており、駐在中はタイ現地で技術部門の立ち上げとマネジメントに従事してきた経験があります。
これらのスキルと経験を土台に、将来的にはマイクロ法人を設立し、技術コンサルティングや日本企業の東南アジア進出支援といった形での独立も視野に入れています。
これにより、会社員としての立場に縛られない働き方が可能になり、2拠点生活の柔軟性も高まると考えています。
② 金融資本の構築(経済的基盤の強化)
60歳・65歳の定年を見据え、現在は金融資産の整理と資産形成にも取り組んでいます。
将来は、年金や配当・利子収入などを活用して、生活費の一部を資産収入でまかなえる状態を目指しています。
そのうえで、自分のペースで働きながら残りを補うことで、精神的にも時間的にもゆとりのある暮らしを実現したいと考えています。
そのために、副業や独立後の収入源を確保する準備を、今から少しずつ進めています。
③ 人的資本・生活習慣の見直し
2拠点生活を無理なく続けていくには、体力や健康が土台になります。
現在は、年齢を重ねる中で将来を見据え、生活習慣の改善や体調管理に取り組むことを意識しています。
特に、平日の過ごし方や休日のリズム、食事・運動・睡眠といった基本的な生活の質を見直しながら、健康的な状態を長く維持できるよう心がけています。
④ 情報発信と社会的な信頼の構築
ブログを通じて、自分のキャリアや駐在経験、ライフプランに関する考えを発信しています。
これは単なる記録ではなく、**今後の活動の信頼性を高めるための「名刺代わり」**として位置づけています。
現時点では副業としての活動には至っていませんが、将来的にコンサルティングや講演、技術支援に展開できるよう、情報発信を通じた認知形成やブランディングを意識した取り組みを少しずつ続けたいと考えています。
これらの取り組みを通じて、私は少しずつ「いつでも2拠点生活を始められる」状態に近づいていきたいと考えています。
焦らず、しかし立ち止まらず、今できることを一つひとつ積み重ねていく──それが、無理のない形で理想のライフスタイルを実現するための道だと思っています。
6. おわりに:人生を自分でデザインするということ
人生100年時代と言われる今、40代後半という年齢は、決して「終盤」ではなく、「これからどう生きるか」を主体的に選び直すことができる貴重なタイミングだと感じています。
これまで積み重ねてきたキャリアや経験を活かしつつ、今後は自分にとって本当に価値ある時間をどう過ごすか、どこでどのように生きるかを、自らの意思で決めていきたいと考えています。
日本とタイ、2つの国を行き来する生活スタイルは、私にとって「過去の延長」ではなく、「未来を前向きに選び取る」ための手段と考えています。
過去のタイ駐在経験があったからこそ、その可能性に現実味を感じ、人生後半に向けての具体的な選択肢として考えられるようになりました。
もちろん、すべてが順風満帆に進むとは限りません。
家族との調整、経済的な備え、健康管理、そして新たな働き方の構築──一つひとつ課題を乗り越えていく必要があります。
ただ、それでも「自分の意思で、自分の生き方を設計する」という考え方自体が、これからの人生に希望と充実感をもたらしてくれるのではないかと思っています。
大切なのは、「何歳だからこうあるべき」という既成概念に縛られることなく、自分の価値観や理想の生活を丁寧に見つめ直すことだと感じています。
そして、小さな一歩でもいいので、それに向けた行動を始めてみること。
それがやがて、未来の選択肢を広げることにつながると思います。
この文章が、同じように人生の節目を迎えている方や、自分らしい生き方を模索している方にとって、少しでも参考や励ましになれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
コメント