第二次試験問題〔金属加工/溶接接合〕を解く

はじめに

選択科目「金属加工」の内容は、「鋳造、鍛造、塑性加工、溶接接合、熱処理、表面硬化、粉末焼結、微細加工その他の金属加工に関する事項」と規定されています。

今回、選択科目の専門知識の一分野である溶接接合の学習として、平成20年度Ⅰ-1-4の問題を解きます。

問題(平成20年度Ⅰ-1-4:答案用紙1枚)と解答

問題

鋼構造物において、溶接部が母材部よりも破壊(脆性、疲労)に対するリスクが高い理由について、力学的視点、金属組織的視点から述べよ。さらに、溶接部の耐破壊特性を向上させる技術について上記視点との関係から述べよ。

解答

1.鋼構造物溶接部の破壊リスクが高い理由

 ①力学的視点:溶接部は、形状欠陥や形状的不連続といった応力集中要因により、脆性破壊や疲労破壊のリスクが高くなる。また、溶接後の凝固収縮で発生する母材の降伏応力に近い残留応力により、亀裂先端が塑性変形して加工硬化する。ここに外力が作用すると、亀裂先端の応力は著しく上昇して脆性破壊のリスクが高くなる。さらに、残留応力は疲労亀裂の開口を助長するため、疲労破壊のリスクが高くなる。

 ②金属組織的視点:溶接ボンド部では、樹枝状晶のエピタキシャル成長により結晶粒が粗大化して、疲労破壊のリスクが高くなる。また、溶接時に侵入した水素を転位が巻き込みつつ粒界へ移動して、水素を集積し靱性の低い組織となる。この低靭性化と溶接欠陥の重畳で脆性破壊のリスクが高くなる。

2.溶接部の耐破壊特性を向上させる技術

 ①力学的視点:形状起因の応力集中回避のためCAEによる熱変形解析技術が用いられる。残留応力に対しては、溶接後の熱処理による応力除去が有効である。また、積極的に圧縮残留応力を付与するショットピーニングやハンマーリングなども有効である。

 ②金属組織的視点:結晶粒の粗大化に対しては、Tiを微量添加しピン留め効果を利用する大入熱溶接用鋼板を用いる。また、水素に起因する脆化に対しては、溶接直後に熱処理(523〜623K)を行う。

終わりに

現行第二次試験の金属加工【選択科目Ⅱ】のⅡ-1で問われる「選択科目についての専門知識」の学習の参考になればと思います。

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