特殊用途鋼として、ばね鋼鋼材、快削鋼鋼材、軸受鋼鋼材などについて説明します。
ばね鋼鋼材(JIS G 4801)は、弾性変形で機能を発揮するため高い弾性限が要求され、また、繰り返し荷重が加わるため高い疲労限が要求されます。
そこで、高炭素鋼を焼入れ焼戻しして使用します。
焼戻し温度が、高温過ぎると強度(弾性限)が低下し、低温過ぎると靭性が低く折れやすいばねになるため、焼戻し温度は通常450~550℃程度で行われます。
一般的に、大型ばねにはばね鋼鋼材を使用し、小型の板ばねにはみがき特殊帯鋼(JIS G 3311)、コイルばねには硬鋼線材(JIS G 3506)やピアノ線材(JIS G 3502)を用いることが多いです。
大型ばねは、熱間成形後、油焼入れ・焼戻しを行い所定のばね特性を得て、自動車などの板ばね、コイルばね、ねじりばねなどの大荷重用に使用されます。
小型ばねは、冷間成形後、低温焼鈍を施して、薄板ばね、コイルばね、トーションばねなどに使用されます。
冷間加工で伸ばした線材は、加工ひずみが残っているので300~350℃の硝石や鉛の融解液中にいれて熱処理(ブルーイング処理)をして、青色の酸化皮膜を作って耐食性を良くすると共に残留応力を取り除きます。
また、ショット(直径0.7~0.9mmの鋼球)を吹き付けて熱処理後に残る黒皮を除去し、表面を加工硬化(圧縮残留応力を付与)させて、耐久性や疲労強度を向上させるショットピーニングが行われます。
- JIS G 4801:ばね鋼鋼材
- JIS G 3311:みがき特殊帯鋼
- JIS G 3506:硬鋼線材
- JIS G 3502:ピアノ線材 など
炭素鋼は軟らかく粘りのあるフェライトが金属組織中に多く存在するため、切削時に切り屑が長くなり切削工具や工作物に巻きつき、長時間の連続切削が困難です。
即ち、自動盤などでは高速切削が難しくなり、生産性低下の原因となります。
そこで、硫黄SやマンガンMnを加えて被削性を改善した鋼材が快削鋼です。
仕上がりは美しいですが不純物が多いため、通常は強度を問題としない場合に使用されます。
- JIS G 4804:硫黄及び硫黄複合快削鋼鋼材
軸受鋼は玉軸受やころ軸受などに使用され、一般に高炭素クロム鋼が用いられます。
1%炭素C、0.9~1.6%クロムCrが主成分で、マンガンMnとモリブデンMo添加で焼入性を向上させた鋼材です。
代表鋼種はSUJ2で、製造される軸受鋼の大半を占めます。
SUJ2:一般軸受をはじめ、耐摩耗性が必要な場合に使用されます。
SUJ3:マンガンMnが添加されており、厚肉大物用途で使用されます。
SUJ4、SUJ5:モリブデンMo添加により焼入性を向上させており、高い耐摩耗性を必要とする場合に使用されます。
- JIS G 4805:高炭素クロム軸受鋼鋼材
耐熱鋼(SUH)
500℃以上の過酷な条件にも耐え、耐酸化性、耐食性、高温強度の良い材料です。
- JIS G 4311:耐熱鋼棒及び線材
- JIS G 4312:耐熱鋼板及び鋼帯
- JIS G 5122:耐熱鋼及び耐熱合金鋳造品 など
非磁性鋼
18クロムCr-8ニッケルNi鋼や高マンガンMn鋼などは非磁性鋼の一種です。
特に電気計器の部品、羅針盤のケースなど渦電流の発生を防止するために作られた鋼が非磁性鋼で、代表的なものに、25%ニッケルNi鋼、ニッケルNi-クロムCr-マンガンMn鋼があります。
不変鋼
鉄Feに多量のニッケルNiを添加すると、熱膨張係数が極めて小さくなります。
弾性係数が温度に対して殆ど変わらず、加熱しても殆ど膨張しません。
用途としては、標準尺、地震計、時計部品、各種計器・精密機器の部品などがあります。