鋳鉄、焼結金属材料について

はじめに

鋳鉄及び焼結金属材料について説明します。

鋳鉄

鋳鉄の組織 

鉄Fe-炭素C系平衡状態図では、炭素C量が2.06~6.67%を鋳鉄に区分しますが、一般的には炭素C量が2.0~4.0%、シリコンSi量が0.5~3.0%程度を鋳鉄という場合が多いです。

また、耐熱性や耐摩耗性等の向上を目的にニッケルNi、クロムCr、銅Cuなどを添加した合金鋳鉄もあります。 

鋳鉄の組織は、炭素C量、シリコンSi量及び冷却速度で大きく変化します。

炭素C量やシリコンSi量が少なく冷却速度が速い場合、炭素Cは全てFe3Cとなり黒鉛が晶出しないため破面が白くなります。

逆に、炭素C量やシリコンSi量が多く冷却速度が遅い場合、炭素Cは黒鉛として晶出するため破面は灰色になり、ねずみ鋳鉄になります。

黒鉛は強度や延性がほとんどなく切欠き作用をするため、黒鉛が多く、粗大に晶出するほど鋳鉄の引張強さ、延性や靭性は低下します。

鋳鉄は素地にパーライト(フェライト相とセメンタイト相の層状)組織が多いほど強靭となります。

また、黒鉛は潤滑剤として機能し、被削性を向上するなどの特性があります。 

鋳鉄の性質 

a) 機械的性質 

ねずみ鋳鉄の引張強さは、最大490MPa程度で伸びや衝撃値は非常に低いです。

圧縮強さは引張強さの3~4倍で、機械の台板等の圧縮部材に使用されます。

疲労強度は引張強さの0.6~0.7倍で、鋼より引張強さに対する割合が大きいです。 

b) 鋳造性 

ねずみ鋳鉄の凝固開始温度は1150~1250℃と低く、1300~1400℃の鋳込温度で流動性を確保でき(鋼材は1600℃程度)、薄肉や複雑形状でも容易に鋳造できます。

凝固時に晶出する黒鉛が膨張するため凝固収縮が小さく、押湯が少なくて済み歩留まりが良いです。

炭素C量やシリコンSi量の多い鋳鉄ほど鋳造性は良好になります。 

c) 耐摩耗性及び被削性 

黒鉛が摺動時に潤滑の役割を果たし、油を保持し、熱伝導も良いため耐摩耗性が良好です。

また、黒鉛の潤滑作用と黒鉛の組織中での点在による切り屑の破砕効果で被削性に大変優れます。 

d) 耐食性 

表面に黒皮が形成されるため耐食性があり、塗料の塗布性も良好です。

アルカリには強く、酸には弱いです。 

e) 減衰能 

ねずみ鋳鉄は、減衰能が鋼に比べて良好で工作機械のような振動を嫌う機械の本体やベッドに適します。 

ねずみ鋳鉄 

ねずみ鋳鉄は、靭性は低いが圧縮に強く、鋳造性、切削性、耐摩耗性などが優れている為、一般工作機械部品、自動車部品などに広く使用されます。 

球状黒鉛鋳鉄 

黒鉛が片状に存在するため応力集中し脆いというねずみ鋳鉄の弱点を補うため、マグネシウムMgやマグネシウムMg合金(鉄Fe-シリコンSi-マグネシウムMg合金)を添加して黒鉛を球状化、均一分布させることで素地のフェライトやパーライトの特性を活かし、強度や伸びを改善した鋳鉄です。

別名、ダクタイル鋳鉄やノジュラー鋳鉄とも呼ばれます。 

可鍛鋳鉄 

原材料の組成はねずみ鋳鉄と同じですが、冷却速度を早くすることで炭素Cを全てセメンタイトとして晶出させた白鋳鉄を用います。

なお、「可鍛」という名称になっていますが、脆性でないという程度で鍛造できるほど延性はありません。

JISでは、白心可鍛鋳鉄、黒心可鍛鋳鉄及びパーライト可鍛鋳鉄の3種類が規定されています。 

合金鋳鉄 

機械的性質、耐摩耗性、耐酸性、耐食性、耐熱性などを向上させる為、ニッケルNi、クロムCr、モリブデンMo、銅Cu、シリコンSiなどを添加した鋳鉄です。

耐熱高クロム鋳鉄(クロムCr含有量:15~30%)、耐酸高珪素鋳鉄(シリコンSi含有量:13~16%)及びニレジスト(オーステナイト)鋳鉄(ニッケルNi含有量:12~15%、クロムCr、シリコンSi添加)などがあります。

硬くて脆く切削できない為、研削加工が必要で、耐酸、耐熱性の必要な機械部品、バルブ、パイプなどに使用されます。

鋳鉄の関連規格
  • JIS G 5501:ねずみ鋳鉄品
  • JIS G 5502:球状黒鉛鋳鉄品
  • JIS G 5510:オーステナイト鋳鉄品
  • JIS G 5705:可鍛鋳鉄品 など

焼結金属材料

粉末冶金法の特徴 

粉末冶金法(焼結金属加工法)は、原料の金属粉末を混合機で均一に混合し粉体を金型中で加圧成形後、原料の融点の3/4程度の温度で加熱して粉末粒子を固相拡散結合(焼結)させる方法です。

その後、焼結後成形体の表面形状(寸法)を得る目的や密度向上のため型圧縮(サイジング、コイニング)を施します。

また、必要に応じて、熱処理、含油、表面処理、切削加工などの後処理を行い製品とする技術です。

材料の歩留まりの良さや切削工程の削減または廃止など部品製造における経済的な利点も多いです。 

焼結金属材料の特徴 

一般に焼結金属材料は、種々の特徴があり、各種機械部品、軸受部品、電気接点用部品及び耐摩耗用部品などに使用されます。 

焼結金属材料の特性は、主に合金組成(鉄系の場合:主成分の鉄Feに炭素C、銅Cu、ニッケルNi、スズSn、クロムCr、モリブデンMoなどを配合)と密度及び後処理によって定まりますが、その他にも原料粉末の種類や成形条件(残留空孔分布など)、焼結条件(温度、焼結時間、炉内雰囲気など)によっても変化します。

焼結金属材料の関連規格
  • JIS Z 2550:焼結金属材料-仕様
日本産業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)の検索(日本産業標準調査会)

コメントを残す