第一次試験問題〔専門科目〕を解く

はじめに

金属部門の令和4年度技術第一次試験問題〔専門科目〕を解きます。

全35問中の1問目です。

問題(Ⅲ-1)と解答

問題

次に示す一定圧力下における共晶系のA-B二元系合金状態図に関する記述のうち、最も不適切なものはどれか(図省略)。

選択肢
  1. 組成Xの合金を均一液体状態から緩やかに冷却した場合、得られる冷却曲線は(d)のようになる。
  2. 組成Yの合金を均一液体状態から緩やかに冷却した場合、得られる冷却曲線は(b)のようになる。
  3. 組成Yの合金を200℃で保持すると、共存する融液の組成は必然的に定められる。
  4. 本系の合金の均一液体状態からの冷却過程で、温度が一定のまま変化しない場合がある理由は、熱力学的自由度が0であることにより説明される。
  5. 共晶温度では、Aの固相とBの固相の両方が同時に晶出するため、金属Aと金属Bは固体状態でも原子レベルで溶け合う。
解答
  • 正答(最も不適切なもの):5

  1. 冷却曲線(d)は、共晶温度(共晶点)に達した際、温度一定の領域が存在してます。これは、物質系が平衡にあるとき、物質系を構成する成分の数nと存在する相の数pの関係を示したGibbsの相律(phase rule)「f=n+2-p」で説明できます。なお、今回の場合、「一定圧力下」と条件がある為、自由度の中から圧力の因子を無視して「f=n+1-p」の形で表現できます。
    この選択肢では、成分の数nはAとBの2つ。相の数pは液相(液体)、固相A、固相Bの3つなので、「f=2+1-3=0」で自由度は0です。従って、温度が変化する自由度はなく、温度一定の領域が存在します。
  2. 冷却曲線(b)は、液相線に達した際、折点が存在してます。これを相律で考えると、成分の数nは選択肢1と同じく2つ。相の数pは液相と固相Bの2つなので、「f=2+1-2=1」で自由度は1で温度が変化する自由度があり、折点が存在します。更に冷却して共晶温度に達した際に温度一定の領域が存在するのは選択肢1と同じ理由です。
  3. 組成Yを200℃で保持した融液の領域では、液相と固相のそれぞれの濃度と量は、200℃における組成Yの点を支点とする「てこの関係」が成立します。従って、組成は必然的に決まります。
  4. 選択肢1や2で説明した通り、熱力学的にGibbsの相律で説明できます。
  5. 「共晶温度では、Aの固相とBの固相の両方が同時に晶出する」ここまでは合っていますが、「金属Aと金属Bは固体状態でも原子レベルで溶け合う」が間違っています。共晶系の場合、金属Aと金属Bが交互に晶出する共晶合金の組織となり、原子レベルで溶け合いは生じないです。原子レベルで溶け合う合金としては、全率固溶体型の状態図を示すCu-Ni合金やAu-Ag合金などがあります。

終わりに

この問題は、平衡状態図と相律に関する問題でした。

選択科目としては「金属材料・生産システム」に分類されると思います。

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