機械構造用鋼について

はじめに

機械構造用鋼として、機械構造用炭素鋼鋼材及び機械構造用合金鋼鋼材について説明します。

機械構造用炭素鋼鋼材(SxxC)

一般的に、鉄鋼材料を機械構造用として使用する場合、一般構造用圧延鋼材(JIS G 3101)よりも信頼性のある機械構造用炭素鋼鋼材を選択します。

炭素含有量と用途に応じて、焼ならし、焼なまし(焼鈍)、焼入れ焼戻しなどの熱処理を施します。

鋼の主要5元素(炭素C、シリコンSi、マンガンMn、リンP、硫黄S)の成分範囲が規定されています。

炭素量で大まかに分類でき、それぞれの機械的性質に応じて用途が分かれます。 

a) 炭素含有量0.10~0.30%程度 

低炭素鋼に分類されます。鍛造、溶接、切削加工が容易で、一般に広く使用されています。 

b) 炭素含有量0.30~0.45%程度 

中炭素鋼に分類されます。低炭素鋼と比較して冷間加工性や溶接性に劣りますが、引張強さや焼入れ硬さは高いです。 

c) 炭素含有量0.45~0.60%程度 

高炭素鋼に分類されます。耐摩耗性や強さを必要とする部品に使用されます。炭素含有量が0.4%を超えると焼入れ時に焼割れが発生しやすくなるため、熱処理は慎重に行う必要があります。 

d) 炭素含有量0.60%以上について

機械構造用炭素鋼鋼材には、炭素含有量0.61%(S58C以上)を超える規定はありません。

従って、炭素含有量0.61%を超える高炭素鋼が必要な場合は、みがき特殊帯鋼(JIS G 3311)に規定されているS60CM、S65CM、S70CM、S75CMや、ばね用冷間圧延鋼帯(JIS G 4802)に規定されているS60C-CSP、S65C-CSP、S70C-CSP及び、炭素工具鋼鋼材(JIS G 4401)に規定されるSK85などを使用します。 

機械構造用炭素鋼鋼材の関連規格
  • JIS G 4051:機械構造用炭素鋼鋼材
  • JIS G 3311:みがき特殊帯鋼
  • JIS G 4802:ばね用冷間圧延鋼帯
  • JIS G 4401:炭素工具鋼鋼材

機械構造用合金鋼鋼材

機械構造用合金鋼鋼材は、焼入れ焼戻しにより強靭性を付与することを目的に、炭素鋼に焼入性を改善する元素(ニッケルNi、クロムCr、モリブデンMo、ボロンBなど)を1種類又は2種類以上添加した入れた鋼材です。

マンガン鋼(SMn) 

マンガン鋼(SMn)は、機械構造用合金鋼のうちマンガンMnを1.2%以上含有する鋼材です。

耐摩耗性や靭性に優れた材料で、合金鋼の中では価格が手頃です。

添加元素のマンガンMnは、シリコンSiと同様に機械的性質を改善し、特に、引張強さや靭性を向上させます。

用途としては、コネクティングロッド、フロントアクスル、リヤアクスルシャフト、ボールジョイント、Uボルトなどがあります。 

マンガンクロム鋼(SMnC) 

マンガン鋼(SMn)並のマンガンMn含有量とクロムCrを0.35~0.70%含有する。

耐衝撃性に優れているため、機械部品一般の他、鉄道車両や自動車用のバネなどに使われています。 

クロム鋼(SCr) 

機械構造用炭素鋼(SxxC)にクロムCrとマンガンMnを添加して、焼入性を改良した鋼材です。

一般的にS45Cなどの炭素鋼の熱処理では設計要求を満足できない場合に使用が検討されます。

同種の鋼材の中では比較的廉価な鋼材です。

ボルト・ナット・キー・軸類・自動車小物部品等に使用されます。 

クロムモリブデン鋼(SCM) 

クロム鋼(SCr)にモリブデンMoを添加した鋼材で、クロム鋼(SCr)よりも焼入性に優れます。

焼戻し軟化抵抗、機械的性質に優れ、靭性もあるため、ボルト、スタッド、軸類、歯車、軸継ぎ手、アーム類、自転車のフレーム等に使われます。

500℃程度の高温下でも強度が低下しにくい鋼材で、高温高圧環境下で使用されることもあります。 

ニッケルクロム鋼(SNC) 

ニッケルNi(1.0~3.5%)とクロムCr(0.5~1.0%)を添加した合金鋼で、耐食性、耐摩耗性にも優れます。

高価なニッケルNiが添加されており、ニッケルクロムモリブデン鋼(SNCM)同様に比較的高価な鋼材です。

ボルト、ピン、軸類、クランク軸、歯車等に使用されます。

焼戻し脆性の傾向が強いので、500℃以上での焼戻しの場合、急冷する必要があります。 

ニッケルクロムモリブデン鋼(SNCM) 

ニッケルNi、クロムCrに加えてモリブデンMoが添加されており、機械構造用合金鋼の中では最も機械的性質に優れた鋼材ですが、高価なニッケルNiが添加されているため、コストも高い鋼材です。

溶接性や加工性は良くありません。

熱処理により、高強度に調整可能なことから航空機に多用されており、軸類、歯車、クランク軸、コンロッド、タービン羽根等に使用されます。

焼戻し脆性はモリブデンMoを添加することで軽減されますが急冷する方が良いです。 

機械構造用合金鋼鋼材の関連規格
  • JIS G 4053:機械構造用合金鋼鋼材

ボロン鋼 

クロムCrやモリブデンMoの代わりに、ボロンBを微量添加(30ppm程度)した安価で焼入性が良好な鋼材です。

衝撃値はクロム鋼(SCr)やクロムモリブデン鋼(SCM)より高いですが、耐熱性(焼戻し軟化抵抗)は劣ります。

ボルトやギヤ類等に使用されます。 

JISでは冷間圧造用が規定されています。

ボロン鋼の関連規格
  • JIS G 3508-1:冷間圧造用ボロン鋼-第1部:線材
  • JIS G 3508-2:冷間圧造用ボロン鋼-第2部:線 
日本産業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)の検索(日本産業標準調査会)

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