普通鋼について

はじめに

普通鋼として、鋼板及び一般構造用圧延鋼材の概要を説明します。

熱間圧延鋼板・冷間圧延鋼板

鋼板は、圧延方法によって熱間圧延鋼板と冷間圧延鋼板に大別されます。

原則として化学成分は規定されておらず、機械的性質(引張強さ、降伏点又は0.2%耐力、伸び、曲げ性)を規定した材料で、自動車分野で広く使用されています。 

熱間圧延鋼板

熱間圧延鋼板(Hot-rolled Steel Sheets)は、低炭素鋼片を熱間圧延して板状に加工したものです。

板厚によって、中薄板(1.2~16.0mm)、厚板(6~150mm)、極厚板(100~300mm)に分類されます。

船舶や橋梁、高層建造物、エネルギー分野などの社会インフラに多く使用されており、自動車分野では、乗用車やトラックのフレーム材などに使用されています。 

熱間圧延鋼板の関連規格
  • JIS G 3131:熱間圧延軟鋼板及び鋼帯
  • JIS G 3113:自動車構造用熱間圧延鋼板及び鋼帯

冷間圧延鋼板

冷間圧延鋼板(Cold-rolled Steel Sheets)は、熱間圧延鋼板を酸洗後、冷間(常温)圧延を行い、更に、調質(硬度の調整、表面の均一平滑化)圧延を施した材料で、板厚は3.2mm以下が多いです。

表面が平滑で、加工性に優れているため、自動車ボデーなどの部材として多用されています。

また、軽量形鋼、ブリキ、亜鉛鉄板などの素材や機械部品、美観を必要とする構造物や各種部品に用いられており、用途は非常に広いです。 

冷間圧延鋼板の関連規格
  • JIS G 3141:冷間圧延鋼板及び鋼帯

高張力鋼板・表面処理鋼板

高張力鋼板(通称ハイテン) 

JISでは、熱間圧延鋼板の場合、引張強さ490MPa以上、冷間圧延鋼板の場合、340MPa以上を高張力鋼板に区分しています。

通常の鋼板に比べて引張強さと降伏点が高いため変形抵抗が高く、衝突時のエネルギー吸収能力に優れます。

また、成形性や溶接性を確保しつつ強度を向上しており、成形による加工硬化が大きいなどの特性を有しています。

プレス加工の場合、耐力は低いほどプレス金型に馴染み易く、伸びは大きいほど深絞りが可能となります。 

高張力鋼板は、強化機構により以下の3種類に大別されて、使用部位に応じて使い分けされます。 

a) 固溶強化型(引張強度の目安:270~440MPa程度) 

Fe結晶格子に侵入型元素(炭素C、窒素N)、置換型元素(シリコンSi、マンガンMn)などを入れる(固溶させる)ことで、結晶格子を歪ませて強度を向上(固溶強化)させたものです。 

b) 析出強化型(引張強度の目安:440~780MPa程度) 

チタンTi、ニオブNbなどの炭化物や窒化物を生成元素を微量添加して鋼中にTiC、TiNやNbCなどを析出させることで、転位の動きを妨害して強度を向上(析出強化)させたものです。

c) 複合組織型(Dual Phase)(引張強度の目安:590MPa以上) 

熱処理で、延性に優れるフェライト組織中に硬いマルテンサイト組織が適量分布した複合組織を作り、加工性を確保しつつ強度を向上させたものです。

但し、590MPa級や780MPa級の高張力鋼板の場合、析出強化型と複合組織型の2種類あり、それぞれ材料特性が異なるため、注意が必要です。 

高張力鋼板の関連規格
  • JIS G 3134:自動車用加工性熱間圧延高張力鋼板及び鋼帯
  • JIS G 3135:自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板及び鋼帯

表面処理鋼板

表面処理の目的は、主に「防錆」、「潤滑性や防汚性など」の機能付与の2つがあります。

表面処理の代表的な方法として、「電気めっき」「溶融めっき」「ドライコーティング(PVD、CVDなど)」「化成処理(リン酸塩、クロメートなど)」「塗装」及びこれらの組み合わせがあります。 

電気・溶融めっき鋼板の代表例として亜鉛めっき鋼板があり、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板及び合金化亜鉛めっき鋼板(溶融亜鉛めっきを熱処理で合金化させた鋼板)がある。 

例えば、亜鉛めっきは、長期間経過すると亜鉛表面が酸化して白錆が発生し見栄えが悪くなるため、白錆発生を防ぐ目的で亜鉛めっき層の上に特殊皮膜(6価クロムフリー皮膜)を形成させる処理(一次防錆処理)を施した鋼板があります。 

表面処理鋼板の関連規格
  • JIS G 3302:溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯
  • JIS G 3313:電気亜鉛めっき鋼板及び鋼帯
  • JIS G 3317:溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯
  • JIS G 3321:溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯
  • JIS G 3323:溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板及び鋼帯

一般構造用圧延鋼材

鉄鋼材料の中でも最も使用頻度の高い材料です。

特に、SS400は、素材・形状の種類(鋼板、棒鋼、形鋼、平鋼)が豊富に出回っており、価格も手ごろで建築、橋梁、船舶、鉄道車両などの構造物に用いられています。

原料となる鋼は、キルド鋼とリムド鋼がありますが、連続鋳造法の確立後は多くが高品質のキルド鋼です。 

化学成分は、物性に悪影響を及ぼすリンPと硫黄Sのみが0.050%以下に規定されており(SS540は、炭素CとマンガンMnも規定されています)、機械的性質(降伏点又は0.2%耐力、引張強さ、伸び、曲げ性)を保証した材料です。

一般的に熱処理を施さずに使用されます。なお、材料記号のSSの後に続く数字が最低引張強さ(MPa)を表しています。

一般構造用圧延鋼材の関連規格
  • JIS G 3101:一般構造用圧延鋼材
日本産業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)の検索(日本産業標準調査会)

コメントを残す