第二次試験問題〔金属加工/熱処理〕を解く

はじめに

選択科目「金属加工」の内容は、「鋳造、鍛造、塑性加工、溶接接合、熱処理、表面硬化、粉末焼結、微細加工その他の金属加工に関する事項」と規定されています。

今回、選択科目の専門知識の一分野である熱処理の学習として、平成20年度Ⅰ-1-5の問題を解きます。

問題(平成20年度Ⅰ-1-5:答案用紙1枚)と解答

問題

鋼の焼入れ・焼戻し処理において、焼入れ、焼戻しの目的を冶金的原理に基づいて述べよ。

解答

1.焼入れ、焼戻しの目的

 鋼の焼入れ、焼戻しの目的は、焼入れにより高硬度な組織を生成させた後、焼戻しにより①硬くて粘い組織または、②靱性の高い組織を得ることにある。

2.焼入れ、焼戻しの冶金的原理

2ー1.焼入れの原理

 鋼の焼入れでは、fccからbctに変形するマルテンサイト変態が起こる。この変態で、オーステナイトに固溶していた炭素は過飽和固溶状態となり、変態に伴い発生した高密度な転位が過飽和な炭素と固着するため硬さや強度が向上する。

2ー2.焼戻しの原理

 ①硬くて粘い組織を得るためには、150〜200℃の低温焼戻しを行う。マルテンサイト相に過飽和固溶していた炭素が準安定な炭化物として析出するため、硬度を保ちつつ過飽和固溶炭素が減少する。また、マルテンサイト相の炭素が減少するため残留応力が緩和されて粘りのある組織が得られる。

 ②靱性の高い組織を得るためには、500〜650℃の高温焼戻しを行う。マルテンサイト相に過飽和固溶していた炭素はセメンタイト相に変わり、マルテンサイト相はフェライト相に変わることで、延性や靱性のある組織に変化する。さらに、熱的回復による転位密度の減少の効果もあり、硬さや強度を低減しつつ延性や靭性が向上する。

終わりに

現行第二次試験の金属加工【選択科目Ⅱ】のⅡ-1で問われる「選択科目についての専門知識」の学習の参考になればと思います。

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